食物アレルギーがあっても学校給食は食べられる?学校給食の現状と代替弁当作りを楽にする方法

新学期が始まり、クラスメートと囲む給食を楽しみにしている子どもも多いでしょう。その一方で、食物アレルギーがある子どもとその保護者にとっては不安な時期でもあります。

かくいう私も昨年までその一人でした。私には食物アレルギーのある子どもがいて、アレルゲンを除去した食生活を10年以上続けています。

本連載では、アレルギーっ子と暮らす中で得た代替食品の知識や調理の工夫、食物アレルギーのある人の生活について紹介していきます。

第一回目のテーマは「食物アレルギーと学校給食について」です。

 

学校給食のアレルギー対応の現状

多くの自治体では、アレルゲンを除去した学校給食の提供や、一般給食からアレルゲンを減らす工夫が行われています。対応の内容は自治体によって異なりますが、大まかな考え方は文部科学省作成の「学校給食における食物アレルギー対応指針(2015年3月作成)」によるようです。

指針では「特に重篤度の高い原因食物:そば、落花生」は、学校給食での提供を極力減らすとしています。実際、我が子の通った小中学校の給食では、そばと落花生は一度も使用されませんでした。

また「特に発症数の多い原因食物:卵、乳、小麦、えび、かに」は、できる限り1度の給食で複数の料理に同じ原因食物を使用しないことや、加工食品の選定に配慮することなどを指針としています。

我が子の通っていた小中学校でも、給食に使われる加工品(ハムやソーセージ)は卵や乳製品不使用のものでした。また、メニューのすべてにアレルゲンが含まれる日もほとんどありませんでした。これらは除去給食ではなく、一般の給食の対応です。

このように、一般の給食からアレルゲンを減らし、アレルギーの程度や除去品目によっては一般給食を食べられるような工夫も行われています。

珍しいケースですが、大阪府箕面市のように特定原材料7品目(卵、牛乳・乳製品、小麦・小麦製品、えび、かに、そば、落花生)の使用をできるだけ控えた低アレルゲン給食を全生徒に提供している自治体もあります。

なお、令和5年3月9日から特定原材料が8品目に変更になり「くるみ」が追加されました。

参考

文部科学省|学校給食における食物アレルギー対応指針

大阪府箕面市|ホームページ(低アレルゲン献立ページより

 

アレルギー対応給食の提供がない場合はどうする?

給食のアレルギー対応は特定原材料が中心です。また、アレルゲンを完全除去した給食の提供は、設備などの問題もあり、どの自治体でも行われているわけではありません。

アレルゲンを除去した給食の提供がない場合や、症状を起こすアレルゲンに対応していない場合は「一般の給食から食べられないメニューだけを除く」「給食は食べずにお弁当を持参する」などの対応をすることになります。

我が子は、小学校低学年時は給食を食べずにお弁当を持参、高学年からは一般の給食を食べ、食べられないメニューのときだけ自宅からお弁当を持参しました。

中学校からは給食センターの新設により卵、牛乳・乳製品、小麦、えび、かに、そば、落花生、ごまのアレルギー対応給食がスタートしたので、弁当持参はせず対応給食を注文しました。

先に紹介した「学校給食における食物アレルギー対応指針」では、エピペンの所持や、アナフィラキシーショックの既往だけを理由に、弁当対応にする必要はないとしています。除去品目が多いなど一般給食を食べるのが難しい場合は代替弁当の持参が安心ですが、食べられるメニューだけ食べるという選択がしやすいように、献立が工夫されているケースも多いです。

 

代替のお弁当は「献立完コピ派」と「オリジナル派」に分かれる

給食の代替としてお弁当を持参する場合、アレルギー児の保護者の中でよく話題になるのが「お弁当の内容」です。「給食献立をコピーしたお弁当を作る」か「給食献立を参考にせずお弁当を作る」に分かれ、迷う方も多いです。

給食献立をコピーしたお弁当を作ろうと考える方は「我が子だけ別のメニューを食べると疎外感が生まれそう」「お友達にずるいと言われそう」といった心配があるようです。一方で、「完コピ弁当は大変」「オリジナル弁当の方が作りやすい」という理由で給食献立を参考にしない方もいます。

 

「献立完コピ派」の私が思うコピー弁当の意外なメリット

私は我が子が小学校1年生から4年生まで、給食の献立を完全コピーする形で代替弁当を作っていました。お弁当を届けに教室に行くと、クラスメイトに囲まれて「給食と同じお弁当すごい」「私も食べてみたい」とよく言われました。

たまに会うクラスメイトの保護者からも「献立をコピーしてるんでしょ?すごいですね」と言われることが多かったです。

一般的には「献立をコピーするお弁当は大変」というイメージがあるようです。しかし、私にとっては真逆。「低コストで作れてバラエティ豊か、さらに栄養バランスの良い献立を栄養士が考えてくれているのだから、そのまま作った方が楽!」という考えでした。

毎日食事を作る中で、私が負担に感じるのは献立を考えることでした。レパートリーが少なく、栄養バランスまで考える余裕はありません。「誰かが献立を決めてくれれば…」と常日頃から思っていました。メニューさえ決まれば、材料や作り方は検索して見つけることができるからです。

そんな私にとって、献立を考えなくてよい完コピ弁当はとても楽でした。よく「前日の残りものをお弁当に入れられないから大変」と言われますが、朝、お弁当に入れたメニューをその日の昼食や夕食の一品にするので、同じことです。

給食では、郷土の料理や世界の料理などバラエティに富んだメニューが提供されます。代替弁当作りを通じて、さまざまな料理に触れられたのも良い経験になりました。

今でも覚えているのは、佐賀県の郷土料理「だぶ」。ボルシチやタンドリーチキンも、使える材料でなんとなく作ってみました。給食献立をコピーすることがなければ作らなかったと思うので、私にとっては良い方法だったと思います。

 

デザートは市販品を使うと便利

給食ではデザートも提供されます。特に桃の節句や端午の節句、クリスマスといった行事にはデザートが出ることが多いです。食事と違って、アレルゲンを除いた材料でデザートを作るのは難しく、時間も手間もかかります。

幸い、アレルゲンを除去したスイーツは市販されているので、デザートはいつも購入していました。

ショクタスで購入できる「豆乳とココアのデザート」(特定原材料等28品目のうち、大豆のみ使用。※本品製造ラインでは、卵・乳成分を含む製品を製造しています。)なども給食に使いやすい商品だと思います。

冷凍食品なので、解凍時間や扱い方には注意が必要ですが、早めに購入して準備でき、便利です。

 

頑張りすぎず、市販品も使ってお弁当作りを楽しもう

皆と同じ給食が食べられなかったり、アレルギー対応の給食が食べられずお弁当持参になったりすると、親も子もがっかりしてしまうかもしれません。

また、周囲の反応が気になることもあるでしょう。除去給食や代替弁当はどうしても注目を集めてしまいがちです。

しかし、安全に食べられることが第一。自治体や学校と相談しながら、安心して安全に食べられる方法を探していきましょう。

子どものためとはいえ、毎日の代替弁当作りは楽なものではありません。完コピ弁当にしろ、オリジナル弁当にしろ、作る人にとって負担が少なく、続けやすい方法を取るのが一番だと思います。

アレルギー対応の市販品はお弁当作りの味方。経験上、デザートは市販品に頼ることをおすすめします。

 

Text/鈴木りんご

ライタープロフィール

情報誌勤務を経てフリーランスのライターに。卵、乳製品、小麦、一部の魚にアレルギーのある10代の息子を子育て中の2児の母。食物アレルギー対応歴は10年を超えます。生活と食べ物は切り離せないため、食物アレルギーについてのアンテナは常に張っている状態。3年前には食物アレルギー対応をしながら台湾家族旅行も実現しました。今度は別の国にも行ってみたいなと妄想しています。