保護者会を活用!子どもの食物アレルギーを他の保護者に共有する方法

食物アレルギーのある10代の子どもと暮らすライターが、アレルギー対応をする中で得た知識や経験したこと、生活の工夫について、連載でコラムをお届けします。今回のテーマは「保護者会を活用して、子どもの食物アレルギーを他の保護者に共有する方法」です。


アレルギーのある子どもが集団生活に入る際には、周囲の保護者にもアレルギーのことを知っておいてもらいたいものです。一方で、どの人にどの程度伝えるかについては、判断に迷う部分ではないでしょうか?


今回は、園や学校で行われる年度初めの保護者会を利用して、子どもの食物アレルギーを説明する方法を紹介します。年代別に伝える目的やポイントを体験談を交えてお伝えします。

 

保護者会で伝える意味・目的とは

同じクラスの保護者に、わが子の食物アレルギーについて伝えるかどうかは判断が分かれるところです。「全員に言う必要はない」「子どもが特に仲良くしている保護者にだけ伝えれば良い」という考えの方もいるでしょう。

 

私自身は、できるだけ多くの保護者に、わが子のアレルギーについて知ってもらいたいと考えていました。年度初めの保護者会でわが子の食物アレルギーについて説明していたのも、新学期の最初に開かれ、多くの保護者が参加する場だからです。

 

クラスの保護者全体に伝えたかった理由は「子どもを経由して聞く前に、食物アレルギーやわが子の状況を正確に伝えたいから」「バザーなど保護者参加のイベントで、配慮をお願いしたいときに話しやすいから」の2点。クラス全体に「食物アレルギーで配慮が必要な子がいる」という事実を知らせておくことで、必要に応じて個別にアレルギーの話がしやすくなることが狙いでした。

 

幼稚園児の場合

幼稚園児は食物アレルギーのある本人も周囲もまだ幼く、保護者のフォローが必要な年代です。また、降園後や休日に友達と遊ぶときは、保護者が同伴したり、保護者同士が連絡を取り合うことが多いです。そのため、あらかじめ伝えておいたことがさまざまな場面で功を奏しました。

 

この年代は、友達の家に遊びに行って、おやつやジュースを出してもらう機会も多く、私には「保護者に伝えない」という選択肢はありませんでした。保護者会で伝えておけば、急に遊びに行くことが決まった際も慌てずに済みます。

 

事前にクラス全体に話しているので、初めて遊ぶ相手であっても食物アレルギーがあることを知っている状態です。私が詳しく伝える前に「どんなことに気を付けたら良い?」と聞いてくださる方もいました。自分から発信するだけでなく、気にかけてもらえるようになり、うまく情報伝達ができたと思います。

 

小学生の場合

小学校低学年では、幼稚園と同様に保護者が介在する場面が多いので、保護者会で全体に伝えるようにしていました。高学年になると、食物アレルギーがあることを既に知っている保護者が増えるので、保護者会ではアレルギーがあることにさっと触れる程度でした。

 

小学生になると、多くの学校で給食が始まります。代替弁当やアレルギー対応給食を食べる「食物アレルギーっ子」は、どうしても目立つ存在です。クラスメイトから「ずるい」「羨ましい」と言われたり、代替弁当が注目を集めたりすることもあります。ほとんどの子どもは興味本位で悪気はないのですが、残念ながら悪意のある言動もゼロではありません。

 

小学生以降、保護者会で食物アレルギーのことを伝える意味は「誤食のリスクを減らし子どもの安全を守る」から「食物アレルギーがいじめに繋がらないように」へと変わっていったように思います。といっても、伝える内容は同じです。食物アレルギーのことを正しく知ってもらうことを重視し、要点を絞って伝えるようにしていました。

 

中学生の場合

中学生になると、友達の家に遊びに行く回数が減ります。遊びに行ったとしても、幼稚園児の頃のようにおやつを出してもらう機会はあまりありません。仮におやつが用意されていたとしても、アレルギーのある子ども自身で食べられるかどうかを判断できるようになるため、保護者に知ってもらう必要性が薄くなります。

こうした事情に加え、中学校の保護者会では、保護者の発言時間が減ることもあり、保護者会で食物アレルギーについて触れることはなくなりました。

 

その他の場面(部活等)

習い事や部活動などで、食物アレルギーについて保護者に伝えるかどうかは、それぞれの状況に応じて判断していました。

小学生の頃に入っていたクラブチームでは、私が練習に常に付き添っていたことと、保護者会がなかったため、保護者全体への周知はしませんでした。代わりに、立ち話をする保護者に食物アレルギーの話をしたり、飲食の機会に担当の保護者に伝えたりしていました。

 

中学校の部活動では、子どもが大きくなっていたため保護者全体への周知はしませんでした。その代わりに、保護者代表と、飲食担当者へ説明し、「何か食べる機会があれば連絡をください。

食べられるかどうか確認できると有難いし、食べられなければ用意します」と伝えていました。部活動では、差し入れや補食を保護者が用意する場合があり、こまめに連絡をいただいたことはとても助かりました。

部活動やクラブチームに参加する際は、「食べる機会がどれぐらいあるのか」をリサーチし、事前に担当者や代表者に伝えておくと良いと思います。

 

保護者会での伝え方・注意点

年度初めの保護者会は、自己紹介、子どもの紹介、学校からの連絡、PTAの役員決めなど内容が盛りだくさんです。食物アレルギーの説明に割ける時間はあまりありません。伝え方や注意点を踏まえ、何を言うか準備することが大切です。

 

保護者会で伝える目的

保護者会で伝える目的は、クラスの保護者全体に「食物アレルギーがある子どもがいる」と知ってもらうことです。詳しい話は、頻繁に往来のあるような、特に仲の良い子の保護者に伝えればよく、保護者会でクラス全体に詳細を説明する必要はありません。

 

危険性だけを強調しない

集団生活で症状が出た場合、本人や担任、養護教諭が対応します。クラスメイトや保護者に手当てをしてもらうことはまずありません。

保護者に伝える目的は、食物アレルギーがあることや、食物アレルギーの程度を知ってもらうこと。危険に対応してもらうことではないことを念頭に置いて話をするようにしていました。

食物アレルギーの危険性だけを強調せず、「該当するアレルゲンを摂取しなければ症状は出ない」ことも伝えるように気を付けていました。

 

伝え方の例

以下は筆者が実際に行っていた伝え方の一例です。

 

まず、事実を説明します。

「卵と乳と小麦にアレルギーがあります」

「これらを食べると、場合によっては重篤な症状が出ることもあるので、給食は食べずお弁当を持参します」

「該当するアレルゲンを食べなければ症状は出ず、食事以外は皆さんと同じ学校生活を送る、元気で明るい子どもです」

 

次に要望を伝えます。

「食物アレルギーのあるクラスメイトがいるということを知っておいていただければと思い、話をしました」

「お子さんからも食物アレルギーのあるクラスメイトがいると話を聞く機会があるかもしれませんが、『保護者会のときに聞いた子のことだな』と思い出していただければと思います」

 

ポイントは、長々と話さず、伝えたいことを絞って話すことです。上の内容を参考に、自分の伝えたいことに置き換えてみてください。

食物アレルギーのことを知ってもらいたくて、ついつい詳細に話してしまいがちですが、長く時間をかけるのは控えたほうが良いです。

年度初めの保護者会は、どの保護者も、クラスや担任のことを知りたくて出席しており、一人だけの話に終始するのは望ましくない場合が多いからです。

 

事前に担任に伝えておく

年度初めの保護者会では議題が多いため、食物アレルギーについて伝えたい場合は、事前に担任にその旨を伝えておくとスムーズです。

「自己紹介のときに話そう」と思っていたら、時間がなくて省略されてしまい、伝えられなかったということもあり得ます。私は、子どもが小学校低学年までは、事前に担任に伝え、保護者会で時間をとってもらうようにしていました。

 

伝えてよかったこと・相手の反応は?

保護者会で子どもの食物アレルギーについて説明すると、さまざまな反応があります。ここでは、伝えてよかったことや、他の保護者の反応を紹介します。

 

知ってもらっているという安心感

食物アレルギーは周囲の方の協力があれば、リスクが減り、より過ごしやすくなります。保護者会でクラス全体に伝えることで、周囲の保護者に知ってもらっているという安心感が生まれます。

 

詳しいアレルギーの話が円滑にできる

特に幼稚園では、新年度が始まって特定の友達とよく遊ぶようになると、保護者同士で話をする機会が増えます。

保護者会で食物アレルギーがあることは伝えているので、詳しい話をスムーズにすることができるのは利点だと思います。もし保護者会で伝えていなければ、一人ひとりに最初から説明しなければならず、大変だったはずです。そのような点でも、あらかじめ話しておいてよかったなと思いました。

 

アレルギーのある子の保護者と知り合いになれる

子どもに食物アレルギーがある他の保護者から声をかけてもらうこともありました。学校の対応や通院している病院など、食物アレルギーについての情報交換がしやすくなります。

 

保護者会を活用して情報を共有しよう

年度初めに行われる保護者会は、多くの保護者が参加するため、食物アレルギーのある子どもがクラスにいることを周知する良い機会です。クラスの保護者全体に共有しておけば、急に遊びに行くことになったときも情報伝達がスムーズにできます。

 

特に、幼稚園から小学校低学年までは子どもの往来に保護者が介在する機会が多いと思いますので、知っておいてもらった方が安心です。私自身、正しく知ってもらうことで「誤食のリスクを減らし、子どもの安全を守る」「食物アレルギーがいじめに繋がらないようにする」などの効果を感じ、毎年話すようにしていました。

 

保護者会で伝える際には、要点を絞ると伝わりやすいです。難しく考えず、伝えたい事実と要望を簡潔に話すように意識してみてください。大勢の前で話すのは緊張しますが、理解してくださる方もいて、話してよかったなと感じることが多かったです。

 

 

Text/鈴木りんご

 

情報誌勤務を経てフリーランスのライターに。卵、乳製品、小麦、一部の魚にアレルギーのある10代の息子を子育て中の2児の母。食物アレルギー対応歴は10年を超えます。生活と食べ物は切り離せないため、食物アレルギーについてのアンテナは常に張っている状態。3年前には食物アレルギー対応をしながら台湾家族旅行も実現しました。今度は別の国にも行ってみたいなと妄想しています。