クラスメイトに言う?言わない?食物アレルギーのこと

食物アレルギーのある10代の子どもと暮らすライターが、アレルギー対応をする中で得た知識や経験したこと、生活の工夫について、連載でコラムをお届けします。今回のテーマは「クラスメイトに食物アレルギーのことを伝えるかどうか」です。

 

食物アレルギーがある子どものなかには、自分のアレルギーについてクラスメイトに伝えたがらないケースもあります。しかし、学校生活において物を食べる機会は多く、周囲の人に知っておいてもらったほうがスムーズに進むことが多いです。ときにはクラスメイトにサポートしてもらうこともあり、正しく理解してもらうことが大切。私の経験談を交え、メリットや伝え方を紹介します。

 

クラスメイトに伝えるメリットとは

学校の中で我が子の一番身近にいる人は誰でしょうか?。担任や養護教諭は食物アレルギーのある子どもをサポートしてくれるかけがえのない存在ですが、いつも一緒にいるのは、クラスメイトです。クラスメイトが食物アレルギーについて知ってくれていると、とても心強いです。ここからはクラスメイトに伝えることのメリットを具体的に紹介します。

 

給食やおやつを食べるときに気を付けてくれる

クラスメイトに伝えると「給食をこぼさないように食べる」「おやつを散らかさない」など、周囲に影響を与える自分の行動に注意し、協力してくれるようになります。私は息子が集団生活に入った幼稚園の頃から、クラスメイトに伝えるようにしていますが、まだ幼い3歳児であってもしっかりと気を付けてくれました。

 

息子が小学生の頃、乳アレルギーのある息子の近くで牛乳がこぼれたことがありました。息子は牛乳がかかった程度では症状は出ないため、近くで普通に食べていたそうですが、気づいた周囲のお友達がすぐに息子を遠くに離し、先生を呼んで、数人で協力して牛乳を拭いてくれたそうです。クラスメイトに伝えることの大切さを実感した出来事でした。

 

異変に気付いたら本人や先生に伝えてくれる

食物アレルギーでは、蕁麻疹や咳などの呼吸器症状、腹痛などのアレルギー症状が出ます。たいていの場合、症状が出れば本人が気づきますが、軽微な症状だと気づかないケースも。特に、顔に出る蕁麻疹は自分で見えないため、痒みが少なかったり、遊びに集中したりしていると気づくのが遅れます。

 

息子は小学生の頃、遊んでいる最中に顔に小さな蕁麻疹が数個出たことがありました。本人は気づきませんでしたが、一緒に遊んでいたクラスメイトが気づき、保健室まで付き添ってくれました。

 

始まりは軽微な症状でも、時間が経つと症状が重くなることがあるので、軽い症状の段階で気づくことはとても大切。異変が起きたときに先生に伝えてくれる周囲のクラスメイトにはいつも感謝していました。

 

除去食や代替弁当への理解が得られる

学校生活の中で食物アレルギーがあることを最も実感するのは給食の時間です。お弁当を持参したり、アレルギー対応の給食を食べたりしますが、いずれの場合も、給食準備の時間にクラスメイトと違う行動をとることになります。あらかじめ食物アレルギーがあることや、食事の配慮が必要なことを説明しておくと、給食の内容や行動が違うことの理解が得られます。

 

お弁当や食物アレルギー対応給食を食べると、注目を浴びることが多いです。息子は「いいな」「美味しそう」と言われたこともあれば「ずるい」と言われた経験もあります。悪気のある言葉ではないと分かっていても、本人は傷つくものです。そんなときに「食べたくても食べられないんだから、ずるくないよ」とはっきり言ってくれたのもクラスメイトでした。

 

アレルギーがあることをいちいち説明しなくていい

学校生活では、食物アレルギーが理由で他の生徒と違う行動をとることがあります。例えば、息子の場合、給食当番を免除されていました。食事を器につぐ際にアレルゲンと接するリスクを避けるため、また、自分のアレルギー対応給食を職員室に取りに行くためです。

 

学年の初めにクラスメイト全員に食物アレルギーのことを説明しておけば「アレルギーだから給食当番をしないんだな」とすぐに理解してくれます。その都度、説明する必要がない点はメリットといえるでしょう。

 

クラスメイトに誰がどのように伝える?

クラスメイトへの伝え方にはいくつかの方法があります。子どもの年齢や性格、保護者の希望と先生の考え、学校の方針などをすりあわせて、ベストな方法を選ぶのが良いと思います。具体的にどんな方法が考えられるのかを私の体験談を交えてご紹介します。

 

先生が伝える

幼稚園から小学生の間は、担任の先生からクラスメイトに伝えてもらうことが多かったです。特に、幼稚園や小学校低学年では、先生に伝えてもらう方がよいでしょう。食物アレルギーがあることや、誤食で症状が出ることを、正しく理解してもらうのが目的だからです。

 

食物アレルギーがあり、学校での配慮が必要な場合、担任が決まった時点で保護者、本人、学校でアレルギー面談をおこなうのが一般的です。このときに、担任の先生からクラスメイトに説明してほしい旨を伝えておきましょう。

 

先生が話すことで、真剣な話なのだと分かってもらう効果もあります。我が家の場合、中学1年時の担任の先生と面談した際に、先生から「命にかかわる重要な話なので、生徒たちには私が話します」と言われたのでお願いしました。

 

中学生になって生徒の人数が増え、クラスの半数は息子の食物アレルギーを知らないメンバーでした。クラスの雰囲気やこれまでの経験から先生が提案してくれたのだと思いますが、とても有難かったです。

 

本人が伝える

小学校高学年から中学生以上は本人が伝えることが多かったです。先生から本人が言うように促されるケースも増えます。我が家では本人が自分で伝えたいか、先生に言ってほしいか選ばせていました。

 

子どもの性格にもよりますが、年齢が上がるにつれ、食物アレルギーのことを話したくないという気持ちが大きくなるようです。また、クラス替えをしたばかりのタイミングで、クラスメイトの前で話すこともプレッシャーになります。

 

息子の場合、クラス替え直後にある自己紹介の時間に、食物アレルギーや配慮が必要なことに触れていたようです。その後、特に仲が良くなった友達には、食物アレルギーについて詳しく伝えていました。子どもが負担に感じるようなら、無理をせず、先生に伝えてもらっても良いと思います。

 

保護者が伝える

幼稚園や小学校低学年では、保護者がクラスに赴き、説明するケースもあります。私の知っているケースでも、食物アレルギーをテーマにした絵本をクラスで読み聞かせて説明した方がいました。食物アレルギーの仕組みや、食物アレルギーがわがままではなく、誤食すれば命にかかわる可能性があると知ってほしいときに良い方法だと思います。

 

食物アレルギーについての知識を最も持っているのは多くの場合、保護者です。先生が説明しづらそうなときや、子どもからの質問を受け付けたいときは保護者が適任だと思います。

 

何を伝える?

クラスメイトには「食物アレルギーがあること」「原因となる食べ物」「症状が出ると命にかかわるケースもあること」「学校で配慮が必要なこと」「同じ給食を食べられないこと」などを真剣に話します。ふざけたり、いたずらをしたりしてはいけないことを、真剣に伝えることが大事です。

 

我が家の場合、先生に伝えてもらうときは、内容も含めて先生にお任せしていました。子どもたちをいつも見ている先生の方が、的確に伝えてくれるだろうと思ったからです。もちろん、学年初めにおこなう面談のときに打ち合わせをし、絶対に伝えてほしいことがあるときはお願いしていました。

 

集団生活に入ってすぐの頃は心配のあまり、あれもこれも伝えなければと焦ってしまいがちです。先生は教育の専門家で、保護者は食物アレルギーの知識があります。両方を合わせた形で伝えられるのがベストだと思います。

 

食物アレルギーって何?クラスメイトの疑問には丁寧に答えよう

幼稚園や小学校低学年の頃、筆者が幼稚園や学校に行くと、クラスメイトに囲まれ「食物アレルギーとは何なのか」「なぜ食べられないのか」をよく聞かれました。

食物アレルギーの仕組みについて丁寧に説明すると、どの子も真剣に聞いてくれました。子どもは好奇心旺盛です。大人からすると「少し難しいかな」と思う話も深く知ろうとしてくれます。

 

息子が小学校高学年の頃、先生から「家庭科の授業で油と酢を乳化させてドレッシングを作る話をしたら、クラスの子が『乳化の乳は牛乳じゃないんだよ』『だから〇〇くんは牛乳は飲めなくても乳化したものは食べられるんだよ』と説明してくれて驚きました」と聞いたことがあります。きちんと理解してくれていることがうれしく、すごいなと感心しました。

 

子どもは素直に何でも聞いてくれるのですが、質問してくれた子の保護者が「そんなこと聞いちゃダメよ」と制することは結構多いです。立ち入ったことを聞いてはいけないと配慮してくれているのだと思いますが、私は「全然いいですよ、聞いてくれてありがとう」と何でも答えるようにしていました。そのせいもあってか、息子の周りにはアレルギーに詳しいクラスメイトが多かったように思います。

 

クラスメイトに伝えるデメリットはある?

食物アレルギーがあり、学校での配慮が必要な場合、アレルギーがあることは遅かれ早かれほかのクラスメイトの知るところとなります。きちんと説明をしていないために間違った情報が広まるよりも、きちんとした理由を伝えておいた方が理解を得やすいと思います。

 

ほかのクラスメイトの立場から考えてみましょう。食物アレルギーがあることを知らされていなければ、食事の際に気を付けることもできません。普通に過ごしていて、何気なくとった行動が、食物アレルギーのある子どもの誤食に繋がってしまう可能性もあるのです。お互いを守るためにも、伝えることは大切だと考えます。

 

食物アレルギーに関して、クラスメイトの言葉に傷ついたり、嫌な思いをしたりすることは確かにあります。しかし、それは、食物アレルギーのことを伝えることによるデメリットではなく、教育の問題だったように思います。私自身は、メリットはたくさん感じましたが、デメリットは特に感じませんでした。

 

伝えることは味方を増やすこと

給食、家庭科、宿泊研修、修学旅行など、食物アレルギーがあることで、特別な配慮が必要な場面は多いです。食物アレルギーがあることを丁寧に説明しておくと、多くのクラスメイトが協力してくれるようになり、学校生活をスムーズに送れると思います。

 

幼稚園から中学校まで、新学年が始まるタイミングでクラスメイトに食物アレルギーのことを伝えてきましたが、隠すよりも正しく伝えることが大切だと実感しています。伝えることは味方を増やすことだからです。

 

本人の意思を尊重し、担任の先生とも相談して、クラスメイトに正確に伝わる方法で説明すると良いでしょう。クラスメイトが味方になってくれると、とても心強いです。

 

 

Text/鈴木りんご

 

ライター プロフィール

情報誌勤務を経てフリーランスのライターに。卵、乳製品、小麦、一部の魚にアレルギーのある10代の息子を子育て中の2児の母。食物アレルギー対応歴は10年を超えます。生活と食べ物は切り離せないため、食物アレルギーについてのアンテナは常に張っている状態。3年前には食物アレルギー対応をしながら台湾家族旅行も実現しました。今度は別の国にも行ってみたいなと妄想しています。